今回は2009年に設立し2018年4月マザーズ上場、そして東京証券取引所市場第一部に市場変更したAI企業のHEROZ株式会社(4382)の企業分析をしていきます。
※20年1月31日に1対2の株式分割をしています。
HEROZ(4382)の事業全体像
HEROZは、人工知能(AI)を中心としたインターネットサービスの企画・開発・運営の事業展開を行っております。
AIの中でも大きく2つ「サービス型」「プロジェクト型」に分けられることが多く、
HEROZは、「サービス型」の分類に入るでしょう。サービス型とは、自社製のAI技術を持ち
プロダクト化しソフトウェアの販売やライセンス契約で利益を得るビジネスモデルです。
その中でもHEROZは主にAIを用いたゲームを軸にしたBtoCサービスと、「HEROZ Kishin」という機械学習サービスの提供を行うBtoBサービスの二つの事業を展開しています。
BtoCサービスは主にゲームアプリで
「将棋ウォーズ」「ポケモンコマスター」「CHESS HEROZ]
「Backgammon ACE」など、AI技術を活用したアプリを販売しています。アプリユーザーからの課金収入がメインとなっています。
BtoBサービスは初期費用と継続費用をもらう形となっていて金融分野、建設、人材、品質管理、ロボット、エンターティメントなどの分野でAIサービスを提供しています。
将棋AIで培ったAI技術の標準化としてHEROZ Kishinを構築しサービス展開。
ここ2、3年で売り上げを伸ばしています。各業種業態に合わせてAI技術・エンジンを組み合わせ提供しています。重点的に「建設」「金融」「エンターテインメント」を当面の領域としていくようです。
エンタテインメントは、ゲーム用AIをゲーム会社に販売していて、大手ゲーム会社バンダイナムコからHEROZのAIが搭載されたAIカードゲーム「ゼノンザード」が発売されています。コーエーテクモホールディングスと共同開発したAIバトルボードゲーム「三国志ヒーローズ」も配信し人気を集めています。
金融では、証券会社との取引が増えて、SMBC日興証券が個人顧客向けに始めた「AI株式ポートフォリオ診断」「AI株価見守りサービス」にAIを提供。マネックス証券向けには、FX取引の診断ツールである「トレードカルテFX」にHEROZのAIが搭載。
建設向けでは、竹中工務店向けに建築構造設計支援用AIを開発中です。建築業界は特に人手不足となっています。
業績について
2020年4月期 第3四半期決算では、
売上高:11億2,100万円(前年同期比+7.8%)
EBITDA:3億7,200万円(前年同期比△8.1%)
営業利益:3億2,400万円(前年同期比△13.5%)
経常利益:2億700万円(前年同期比△27.0%)
四半期純利益:1億8,400万円(前年同期比△27.9%)
となっています。
営業利益は前年比6.7%増と低い伸びにとどまりました。
人件費、GPUサーバーへの設備投資に伴う減価償却費増加、採用関連費用の増加が営業利益の圧迫要因となりました。
HEROZはBtoB事業の比率が高まるに連れて営業利益率も上がっているようです。今まで主力であった、ゲーム事業はプラットフォームを提供するAppleやGoogleに対し課金時の決済手数料や支払手数料を支払わなければならないため、利益率を圧迫してましたが、BtoB事業のは売上原価にかかる変動費が特にない為、利益率が高くなります。
今後も人材費・開発コストは上昇予定となっています。
3C分析
今回は一番有名で利用されやすいフレーム3C分析をします。
Customer(顧客)
HEROZの顧客は2つあります。
BtoC=一般消費者 大きく言うと主にゲームを行っている人がターゲットになってきます。
BtoB=企業
・企業の中でもAI活用をいち早く取り入れたい企業。(人材不足)
・キャッシュがありAIに対して投資意欲がある
・データを多く保有している企業
・ゲーム会社(AIのアルゴリズムを入れたい)
など。
現在売り上げを伸ばしているBtoBの方がターゲットセグメントが明確でキャッシュをもっていることが想定されるので1社でも契約となると大きな売り上げになると考えられます。
一方でBtoCの場合は、主に収入はゲーム課金となります。ゲームの人気度(ダウンロード数やエンゲージメント)によって売り上げは左右されます。安定する場合もあれば不発で終わってしまう可能性があります。浮き沈みの激しいゲームアプリ業界。ゲームの主流も変わっていくのでそのターゲットに応じた開発が必要になってきます。
Competitor(競合)
AIのアルゴリズムを一から開発できる会社は、日本ではごく少数と言われています。国内で競合となるのは、
PKSHA Technology<3993>
PKSHA Technologyは、BtoB専業でAIをサービスを展開しています。各種アルゴリズムのライセンス販売事業をしています。顧客企業が他社サービスに乗り換えにくいビジネスモデルを持っていてHEROZと似ている部分があります。
Kudan<4425>
AP(人工知覚)技術のパイオニア企業です。AR/VR・ドローン・自動運転・ロボティクス等への応用を目的としたコンピュタビジョン技術(ソフトウェア)の開発とライセンス提供しています。
ALBERT<3906>
ビッグデータ分析、AIのアルゴリズム開発、システム実装を一気通貫で行っていて、ビッグデータ分析を主に強みとしています。トヨタ自動車と資本業務提携し自動運転関連のプロジェクトを実行しています。
Company(自社)
HEROZは、他社とは違い、ゲームアプリに自社製AIを組み込んだ「将棋ウォーズ」を展開し、BtoCの市場にも参入しています。そこから、将棋AIで培ったAI技術でディープラーニング等の機械学習システム「HEROZ Kishin」で、BtoBに展開し売り上げを伸ばしてきています。
またゲーム会社を通して今後もHEROZ製AIが搭載しているゲームが販売されていくので
売上高に応じた継続フィーが入ってくる点もゲームから始めた強みであると言えるでしょう
まとめ
日本におけるAIソフトウェア市場は2025年まで急成長市場でもあると言われています。
2030年には2兆1,200億円にも及ぶとの調査結果もあるぐらいです。(出所:富士キメラ総研「2016 人工知能ビジネス総調査」)予測では市場は10倍以上の規模に広がるとされています。特に日本は人手不足であり高齢化が問題されています。各産業としてもAIの導入ニーズは高いと言えます。AI関連市場は拡大を続けるものと見込まれています。
そしてHEROZはゲーム会社からAI企業へと成長しています。BtoBに力を入れることで高収益成長市場に参入し成長しようとしています。このAIのBtoB市場で勝ち残っていけるのか。
大手企業がAI業界と資本締結を結ぶ動きが活発になってきています。国内だけではなく海外に目を向けると手強い相手は多いです。
その中でも良い人材を確保し続けることがきるのか。開発スピードを落とさずに進められるのか。
が重要なポイントになってくるのではないでしょうか?