企業分析

企業分析-ENECHANGE株式会社(4169)

今回は、電力・ガスの比較サイトを運営しているエネチェンジ社の企業分析をしていきます。

企業概要

エネチェンジ社は2015年に創業し、エネルギーに関する事業を展開する会社です。代表取締役は創業者の城口洋平氏であり、現在も22.8%の筆頭株主でもあります。

創業のきっかけは、2011年の東日本大震災と福島第一原発事故とのことで、そこから電力事業に関心を持ち、イギリスのケンブリッジ大を経て起業をしています。

同社の業界的なポジショニングは、エネルギーテック分野のカテゴリーリーダーとしています。昨今の電力業界は、脱炭素化・デジタル化・分散化・自由化と変革の波が押し寄せています。

その中で、同社は発電所や送電線などの設備を持たず、あくまでデジタルやテクノロジーを活用した事業を行う点が特徴的です。

https://ssl4.eir-parts.net/doc/4169/ir_material5/168985/00.pdf

事業概要

エネチェンジ社の事業は大きく2つの事業に分けられます。

https://ssl4.eir-parts.net/doc/4169/ir_material5/168985/00.pdf

プラットフォーム事業

プラットフォーム事業において最も有名なサービスは、同社の社名と同じである「エネチェンジ」でしょう。2016年の電力自由化によって、家庭用の電力も自由に電力会社を選べるようになりました。

一方で、様々な電力会社がありどこの会社がいいか迷ってしまう人も多いのではないでしょうか。同社はその中で、電力会社を比較できるサイトを展開し、今では日本最大級の比較サイトにまで成長しています。

ビジネスモデルとしては、同社のプラットフォームから契約が成立した場合、その電力契約の料金の数%分をエネチェンジが電力会社から手数料として収受するモデルとなっています。

一般的に比較サイトは、購入契約が発生した時点のみのショット収入が多いですが、エネチェンジの場合は契約成立後も継続して事業収入が得られるストック型のビジネスモデルとなっている点が特徴的です。

https://ssl4.eir-parts.net/doc/4169/ir_material5/168985/00.pdf

データ事業

もう一つはデータ事業です。その中でもエネルギーマーケティングSaaS(EMAP)とスマートメーターデータマーケティングSaaS(SMAP)の2種類に分類できます。

EMAPでいうと具体的には、電力会社・ガス会社向けのDXサービスの開発が挙げられます。例えば東京電力や東京ガスなどに、契約の切り替えシステムなどをクラウドで提供しています。

クラウドで提供することで、電力会社などは自前でサーバーやシステムを維持することなく月額料金だけで運用が可能になります。

もう一つはSMAPですが、こちらは電力量を計測するメーターから得られたデータを用いた事業です。デマンドレスポンスというのは、電力需要が高いときに顧客に節電を頼む活動を意味しますが、そのようなデータ解析に関するシステムを開発し提供をしています。

いずれの事業においても、一発限りのフロー収入ではなく継続的に収入が入るストック型のビジネスモデルというのがエネチェンジの強みと言えるでしょう。

https://ssl4.eir-parts.net/doc/4169/ir_material5/168985/00.pdf

それでは、これらの事業による業績を見てみましょう。

業績の確認

では、業績を見てみましょう。売上高、ストック収入ともに右肩上がりです。前年同期比90%と非常に高い成長率となっています。一方で収益の部分は15%と比較的伸び悩んでいるように見えますが、こちらは成長のための先行投資によるものと思われます。

財務状況の確認

財務諸表から同社の財務状況を分析していきます。

貸借対照表

こちらを見ると、素晴らしい財務状況が伺えます。システム主体の事業ですので、固定資産が必要がないことから現金が溢れ出ています。自己資本比率が38%とIT系企業としてはやや低い気がしますが、これだけ現金があれば問題ないでしょう。

損益計算書

こちらを見ると、売上高が右肩上がりである一方利益は低めです。とはいえ、成長途上の企業ですのでまだまだ利益は先に見据えつつもシェアを取る、サービス開発を進めていくという方針なのでしょう。

キャッシュフロー

フリーキャッシュフローはマイナスが続いていますが、2020年の上場時に大きく資金を得ていることがわかります。この資金で成長投資をしていることがわかります。

株価と重要指標の確認

現時点での株価と重要な指標を見ていきます。

株価

株価は、年初来258%と大きく伸びています。昨今の脱炭素トレンドにうまいこと乗れていますね。

時価総額は659億円ですが、昨年度の売上高は20億円弱なのですが、かなり期待が織り込まれた企業価値と言えるでしょう。正直言って、かなり高い・・・

重要指標

重要指標を見ていきます。利益がまだ大きく出ていませんのでPERとROEは計測不能です。

PBRが64倍、PSR24.8倍と指標だけで見るとかなりの割高です。今後も成長が見込まれますが、現状はとても変えない価格水準だと感じます。

まとめ

いかがでしたでしょうか。脱炭素化・分散化・デジタル化・自由化という大きな波が押し寄せている電力業界において、電力比較サイトの圧倒的トップとなり、更には既存の電力会社のシステム開発にも食い込んでいるというエネチェンジ社の紹介でした。

通常、電力業界に進出するとなると、発電所を開発したりと投資資金が多額であり事業の安定性も難しいビジネスなのですが、エネチェンジ社のビジネスは一度プラットフォームが確立してしまうと、多額の投資をせずとも安定して収益が入ってくるモデルになっているので、今後も安定的に利益を出しながら成長していく企業だと思われます。

一方で、トレンドに乗っているということもあり非常に割高な株価であることは否めません。魅了的な会社であることは間違いありませんが、購入タイミングには気をつけたいところですね。

あわせて読みたい