2月24日、ロシアはウクライナに対して軍事侵攻に踏み切り、ウクライナ軍がそれに応戦する形でついに戦争が始まりました。
戦争の背景には、旧ソ連の領土であったウクライナがNATOに加盟しようとしていたこと、旧ソ連時代から歴史的・政治的背景がありますが、今回はそこには踏み込まず、株式投資の視点からどのような動きになっているのかを解説していきたいと思います。
資源国であるロシアへのエネルギー依存問題
ロシア要人やロシア企業などの海外口座の凍結、国際決済ネットワークSWIFTの締め出しなど、ロシアはこれまでにない大きな規模の経済制裁を受けています。しかしながら、天然ガスや小麦などロシアに依存している輸入品があるため、資源のない日本においては難しい舵取りを迫られています。
天然ガス価格の更なる上昇
世界での電力需要増大、脱炭素トレンドによってCO2排出量の少ない天然ガスの価格が大きく上昇していますが、今回のウクライナ侵攻により更に価格が上がると言われてます。
その理由として、天然ガス生産量で世界2位のロシアからの天然ガスを経済制裁として購入しないこととなり供給量が落ち込むからです。
日本の原油・天然ガスもロシアから輸入
経済産業省によると日本は、輸入原油のうち約6%を、輸入天然ガスのうち約9%をロシアから輸入しています。資源のない日本にとっては、非常に重要な貿易国と言えるでしょう。
日本の電力会社においても、環境性の配慮から天然ガスでの火力発電の導入が進められていますが、価格高騰により電気料金価格も大きく上がっています。
ロシアとウクライナの戦争というと、どこか遠い印象を持ちますが家庭の電気代という身近なところにまで非常に大きな影響があるのです。
また、石油・天然ガスの開発プロジェクトにおいても、三菱商事や三井物産など日本企業が参画しており、そのようなプロジェクトについても今後の動向が注目されています。
天然ガスパイプラインに翻弄される欧州
ロシアとは海で隔てている日本は、天然ガスを液化して船で輸入していますが、陸続きの欧州はロシアから直接パイプラインを引いて、天然ガスを輸入しています。
欧州は天然ガスの約4割をロシアに依存し、特にガスパイプラインを敷設して供給しているドイツでは特に影響が大きいとされています。
今のところ、アメリカからの輸入によってなんとか凌いでいる状況ですが、今後の見通しではロシアからの輸入が途絶えると欧州のエネルギー需要を賄えなくなるとされており、余談を許さない状況です。
資源価格の高騰を受け、再エネ銘柄にスポットライト
以上のように、石油やガスなどはロシアへの依存度が高く、欧州としても中々強気に出られない状況になっていますが、どのように対処していくべきなのでしょうか。
ロシア依存を減らすには再エネ?
このような状況の中で、ロシアへのエネルギー依存を減らすべく、再エネ推進のための資金が集まっているとの記事があります。
ロシアのウクライナ侵攻を受け、再生可能エネルギー企業の株価が上昇している。石油やガスのロシア依存を減らすため、再生エネの活用に拍車がかかるとの思惑が浮上しているためだ。エネルギー安全保障やコストの観点から、化石燃料から再生エネへの移行がさらに加速しそうだ。
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUC0161V0R00C22A3000000/
確かに、太陽光や風力などの再生可能エネルギーであれば海外からの輸入に頼らずに発電することができますが、一方で天気に左右されるというデメリットがあるので、これだけでは不十分です。
再エネ大手のレノバが伸びているが・・・
世界各国の再エネ銘柄に資金が集まっていますが、日本においても同様の動きが見られます。
再エネ大手のレノバ社も昨今のエネルギー問題に反応し株価をあげていると、日経新聞が書いていましたが、株価を見てみると、洋上風力の入札に敗れて以降、株価の回復には至っていません。
また、同社の主力事業であるバイオマス発電においても、バイオマスの燃料価格が上がることが予想されることから、あまり楽観的に捉えるのは危険だと思われます。
非常に大きなマーケットとして注目されていた一般海域における洋上風力は、第一陣である3海域の入札において三菱商事が総取りという結果になりましたが、詳しくは以下の記事で解説しています。
再エネだけでは難しい現実
確かに、太陽光発電や風力発電などの再生可能エネルギーは、火力発電のように資源を輸入せずとも発電可能ではありますが、日光や風況などに発電量が左右される気まぐれなエネルギー源です。
そのような再エネだけでは24時間、電力を安定供給することは難しいことから、本当にロシアからの影響を減らすことを考えると、原子力発電の稼働というのは欠かせない役割になると思われます。
もちろん、原子力発電においてもウランの輸入が必要となりますが発電量に対する燃料の割合が極めて小さいこと、え輸入国が分散されリスクが軽減されるこなど、資源の乏しい日本においてはとても重要な役割を持っています。
まとめ
現在も激しい戦闘が続いているとされるロシアとウクライナとの戦争ですが、資源のない日本においては他国との貿易がなければ今のようなエネルギーを豊富に使った生活を送ることは難しいと言わざるを得ません。
原子力発電所の多くが稼働していない日本において、天然ガスはCO2排出量が少ない発電燃料として、大量に輸入していますが、それのみを使っていると資源国に依存してしまいます。今回の戦争でそのリスクが顕在化したように見えます。
太陽光や風力の再エネや原子力発電など多様な発電方法をバランスよく使っていくことが、安全保障上とても重要になります。
エネルギー問題が起こったからといって、短絡的に「再エネが伸びる!」と考えるのは大変危険です。各国のエネルギー事情やエネルギー供給の全体像をしっかり捉えて、投資を行いましょう。